北九州市立大学文芸研究会のブログ

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親愛なるA嬢へのミステリー

みなさんこんにちは、いかがお過ごしでしょうか。白石萌々佳です!

今回は本の感想にしてみました。とはいっても漫画ですし、書評と言うほど深い考察もできないので、単に私の感想です。読み流してもらえれば……と思っております。

 

「親愛なるA嬢へのミステリー」 モリエサトシ 講談社

 

あらすじを紹介しますね。

「本好きな少女・綾乃は、気がつけばいつも物語の世界に浸っていた。そんな彼女はひょんなことから、遠縁にあたる小説家探偵・能見啓千の身の回りの世話をすることに。啓千は都筑応居という小説家として熱狂的なファンを多く持っていたが、大学の友人・大悟の恋人だった綴に右手を切られ、断筆。しかし彼の書いた小説はいまだに人々を魅了し続け、数奇な事件を次々と引き寄せてゆく」(親愛なるA嬢へのミステリー3巻より)

コミックスから引用させていただきました。

何よりも、主人公の綾乃ちゃんが圧倒的にかわいいです。啓千さんの背中にもたれかかって本に没頭する姿が、本当にかわいいです。すっかり本の世界に入り込んでいるときは、瞳がきらきらして背景にも星が舞ったり、描写もかわいらしくて大好きなシーンです。

そんな綾乃ちゃんがふとした時に見せるシリアスな表情だったり、心に刺さる言葉だったり、そのギャップがまたいいですよねー。ネタバレになってしまうので「あのセリフが」とか「あのシーンが」とか書けないのがとっても残念です。ぜひ実際に読んで確かめてください。

啓千さんのキャラクターも大好きです。クールキャラでいつも涼しい顔をしているのですが、綾乃ちゃんのピンチで見せる心の底から焦った表情とか、綾乃ちゃんだけに向けるあたたかい笑顔とか、何度も目で追ってしまいます。

しかし、啓千さんのことを語るうえで外せないのは、都筑応居として綴った文章が作中に登場するシーンでしょう。私も物書きの端くれです。もともと読書は大好きです。応居の文章がどれだけすごいか、とてもよくわかります。第1巻に登場する応居の作品「夏時雨の恋人」は、1ページ丸々使って、素敵なフレーズや登場人物の一人である「綴」という女性の描写があります。初めてそのページを見たとき、ため息が出ました。感嘆のため息です。どうしたらそんな言葉を思いつくんだろう。どうしたらそんな描写が書けるんだろう。本当にそう思いました。それくらい、衝撃的なページだったんです。

作中で起こる事件は、すべて都筑応居の作品がきっかけになっています。自分の書いた小説が発端となって起こった事件を解決し、まるで物語の世界を迷いながら生きているような啓千さん。彼に寄り添い、手を引き、現実の世界との仲立ちをしている綾乃ちゃん。2人の関係がどう変わっていくのかも、注目していただきたいポイントです。

全3巻のとても短い漫画です。でも、すべて読み終わったときの充足感は1冊の小説と同じくらい重みがあって、幸福な気持ちになります。

ずいぶんしっかりと書いてしまいました。良ければ読んでみてくださいね。

ありがとうございました。次回の更新をお楽しみに。