北九州市立大学文芸研究会のブログ

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彩らる紋の家

 清涼院流水という作家に私が魅せられたのは大学時代で、まあ勢い余ってコズミックとジョーカーの文庫版を「清涼in流水」読みで読破しましたが、今ひとつよくわからなかった。よくわからなかったものの、その文章の凄みを見ました。その凄みにさらに魅せられて今に至るわけでして、「彩紋家事件」もその一つの要因となっている次第。
 
 さて、彩紋家事件というのは私が常日頃から紹介しているJDCシリーズの作品です。時系列としては、ジョーカーよりもさらに前。作中に登場する日本探偵倶楽部の誕生秘話といったところでしょうか。個性的な探偵たちも出てきます。今回の主人公は、記憶喪失を患い、人生の再スタートを果たした螽斯太郎と、後に日本探偵倶楽部総代となる鴉城蒼司。

 

 私が読んだのは文庫版でした。分冊で全3巻。
 ちなみにノベルス版だと上下巻で
「極上マジックサーカス」
「下克上マスターピース
 と、このように綺麗なタイトルがあります。


 さて。
 今回も相変わらず問題作(褒め言葉)でした。
 コズミックでは1200の密室で1200人殺されました。
 ジョーカーではミステリの十戒と二十則をすべて文字通り網羅しました。
 今回は、毎月19日に人が死にます。
 それが19ヶ月続きます。
 
 で、その様子が描写されながらも、前半の大部分は「奇術サーカス」の描写でした。
 それも、二回。
 全3巻のうち、1巻は全て奇術サーカスで埋まり、2巻の途中まで続きました。
 そうしてようやく、お話そのものが前進するのです。
 奇術サーカスを営む彩紋家、九十九家、冬扇家の三家が鍵となり被害者となります。
 おなじみ、JDCシリーズの顔とも言えるような、言葉の魔術師(ワーディシャン)こと龍宮城之介と、探偵神九十九十九。どちらも幼少の姿として登場します。十九に関しては、もうこの頃から探偵としての神技を見せています。鴉城蒼司と九十九十九の協力によって、この事件は解決したようなものですし。
 ……いや、解決というのもいささか違うような。コズミックにも書かれていたように、彼はその彩紋家事件での生き残りです。つまり、先に述べた御三家はほとんど死にます。
 タイトルにもある彩紋家事件ですが、3巻の終盤になって急展開が発生。「彩紋家事件はまだ始まってすらいない」とまで。色々と言葉遊びが仕掛けられ、それが彩紋家自体の構造に直結したりしていて、ある意味、読んでて楽しかった側面はあります。
 
 ありますが、トリックが解明されたわけではなく……そっちの方面で読んでいた人にしてみれば、この作品はかなり大失敗だったかもしれません。毎月19日に人が死に、19ヶ月続いたかと思えば、それがもう一周するのですからたまったもんじゃありません。彩紋家事件と彩紋家殺人事件を区別することから、彩紋家事件自体は殺人ではないとまで。構造としてはかなり無茶苦茶をやっています。これぞ流水大説って感じ。
 
 さらに私は失敗を犯しました。
 実際のところ、刊行順で言いうとこの「彩紋家事件」、「カーニバル」の後でして。
 多少のネタバレもありました。物語最後にて一気に時間が進み、カーニバルの後のお話が描かれていて、「やってしまった」といった感じです。「カーニバル」は3作目。「彩紋家事件」は4作目です。これの経緯については、文庫版「彩紋家事件」3巻の末尾付録である「「彩紋家」についての事件」にて詳しく書かれているため割愛します。

 まあ結局、私に残されたJDCシリーズは「カーニバル」のみですね。
 今のところ清涼院流水御大が言及している「双子連続消去事件」について音沙汰無しなのが気になってしょうがない。TOEICにご執心らしく、JDCの未来やいかに!?

 といった感じですね。


 だいぶ前に読了した分なので、かなり記憶が薄れている。
 Twitterもちょくちょく呟くことになるかもしれませんので、その時はよろしくおねがいします。

 それでは。